どうしてこうなったのかわからない。
帝人はぐるぐるとした頭でとりあえず今の状況を整理することにした。
部屋に帰ってきたら白いジャケットにピンク色のコードのヘッドフォンをした静雄がいて、でもその人は静雄ではなくて、新羅の研究で生み出された存在だという。
「サイケデリック静雄」と名乗ったその人は静雄のDNAをベースにしているらしい。
そうして今、帝人はその通称「デリ雄」に押し倒されていた。

「え、とあの…デリ雄さん…?」

夕日の差し込む部屋に口角を吊り上げた静雄そっくりの顔が映る。
瞬間、何だかぞわぞわとした得体の知れない感覚が帝人の全身を駆け巡った。
あ、逃げなきゃ。
そう思うのにデリ雄の押さえつける力は静雄並に強く、いくら帝人が力をいれてもビクともしない。
これは本格的にまずいかも知れないと帝人が危機感に襲われていると本人の口から決定的な言葉が放たれる。

「なあ、ヤらせろよ。」

にやにやと笑う彼は元になった筈の静雄からはまったく想像できない。
やはりこの人は静雄と同じ顔をしていても別人なのだ。
そうはっきりと認識した途端、帝人は狂ったように暴れだした。
両手はしっかりと拘束されて動かないので唯一自由になる足と口で必死の抵抗を試みるがデリ雄には一切通じない。
それどころか片手で口を塞がれてしまう。

「ぎゃあぎゃあうるせえな。別にオリジナルにいつも足開いてんだろ。」

そういう問題ではない、と大声で反論したかったが塞がれている為くぐもった声しか出てこない。
静雄さん静雄さん…!
叫んでも決して状況が一変するわけはなく、静雄が助けに来てくれるわけもない。彼は今勤務中なのだ。
悔しくて帝人の眦に涙が滲む。
その涙を舐めとってにやりとデリ雄が笑う。


「いただきます。」




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