「こんにちわ。」
「…おう。」



ぺこりと小さな体を傾げてお辞儀をするのは来良学園の制服を着たまだまだ幼さの残る顔をした普通の高校生、竜ヶ峰帝人。
吸っていた煙草を踏み潰し、どこかぎこちなく片手を上げるのはバーテン服を着た池袋の喧嘩人形と称される、平和島静雄。
普通であれば何の接点もないミスマッチな二人は何故だか一緒に公園でブランコを漕いでいた。














「あ〜…えっとお前あれだ。セルティとこの前一緒にいたよな。」
「はい。竜ヶ峰帝人と言います。」
「竜ヶ峰…俺は、」
「平和島静雄さん、ですよね。」
有名ですから。と帝人は笑った。
静雄は世間で自分が悪い意味で有名なことは知っていたし、天敵である折原臨也が擦り付けてくれた罪状のおかげで噂に拍車がかかっていたことも知っている。
(やっぱり臨也は殺そう)
いつものように同じ結論に辿り着いて少し気が晴れると横から肉まんが差し出された。
「あぁ?」
「あの、えとすみません。何だか眉間に皺が寄ってらっしゃったので…どうぞ。あ!まだ食べてないですから大丈夫ですよ。」
別段怒っていたわけではなかったのだが、少し声が低くなってしまっていたらしく、帝人の肩が上がっていた。
どうやら、お腹が空いて苛ついていると思われたらしい。
「…サンキュ。」
トム以外でそのような反応を返されたのは初めてで、どこかむず痒さを感じながら差し出された肉まんを受け取る。
頬張る静雄を見て嬉しそうに帝人は笑った。


「あ〜、それでよ、そいつがガンつけてきたからちょっと殴っただけなのに白目むいて倒れてよ…」
「やっぱり店長を殴ったのはやばかったんだけど、だけど中年のオヤジが中二病よろしくキモイこと言ってくるのは犯罪だと思うんだ。」
そこまできてハタ、と静雄は気付く。
つい、セルティを相手に話しているような気になってひたすら愚痴っていたことに。

…高校生相手に何を言っているんだ、俺は…

というのも、帝人は静雄の話を遮ることなくところどころ頷いては静かに聞いてくれていて、ついつい調子にのって喋りすぎてしまったのだ。
「悪い、愚痴に付き合わせちまったな。」
「え?や、大丈夫ですよ。僕には想像もつかない話ばかりで楽しいです。」
言ってから帝人は「平和島さんも大変なのに楽しいは失礼でしたね。すみません。」と言って謝った。

そういえば、ここまで近い距離にいて人間相手にキレなかったのは初めてではなかろうか。

「…竜ヶ峰!」
「は、はい!」
ブランコから立ち上がってその小さな両手を握る。
「俺と付き合ってくれ!」
「…へ?…は、はい…」
何を言われたのかよくわからないまま静雄の勢いに飲まれて帝人は頷いた。









まずはお友達から








(とりあえず、帝人って呼ぶな。)
(はい。)
(次はいつ暇だ?)
(えーっと明後日は午前授業なんで午後から暇です。)
(よし、来良まで迎えに行くから待ってろよ。)
(えぇ!!?)


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