ピィタァパンシンドロォム(臨帝同級生パラレル)


「あれ。サボりだ。」



天気のいい屋上で臨也が惰眠を貪っているとクスクスと笑う声が聞こえる。
耳に心地いいボーイソプラノの声は今一番、臨也が愛しくてやまない者のそれだ。
隣に気配が降りるのを確認して、臨也は閉じていた瞳を開く。

「俺がサボりなら帝人も同じだよ。」
「僕?僕は違うよ。保健室に行ってきますって言ってきたもの。」
「えー!真面目な委員長がそんなんでいいのー?」

明らかに揶揄している臨也に帝人は悪戯っ子のように片目を瞑って答える。

「何言ってるの。こういう時に無条件に信じてもらえるから真面目に委員長なんてしているんだよ。」

笑みを崩さない帝人に臨也は大声で笑った。

「アハハハ!やっぱり面白いよ帝人!大好きだ!」
「それって褒め言葉じゃないよね。」

苦笑いを零す帝人に臨也はひとしきり笑った後、体勢を変えて頭を隣に座っている帝人の膝の上に乗せた。

「……ちょっと。」

抗議の声を上げる帝人を黙殺して臨也は手伸ばし、柔らかな頬に触れる。

「今日くらいいいでしょ?せっかく煩いシズちゃんがいないんだからさ。」

臨也の天敵とも言っていい静雄は法事だとかで学校を欠席している。でなければこんな穏やかになど過ごせるわけがない。
諦めたように溜息を一つ零して帝人は臨也の好きなようにさせることにした。

「もう少し君達が仲良くしてくれれば僕の苦労も減るのにな。」

独り言のつもりで呟いた帝人の言葉に臨也は盛大に眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をする。

「ジョーダンでしょ!そんなこと天地がひっくり返ってもありえないね!あんな俺の思い通りならない怪物となんてまっぴらごめんだよ。」

ただでさえ気に食わないのに静雄は明らかに帝人に好意を抱いているのだ。
盗られない自信も繋ぎとめる術もあるがやはり気に入らないものは気に入らない。
そんな臨也の心中など知らず、帝人は小さな子供のように唇を尖らせて不機嫌になった臨也の頭を撫でる。

「本当、しょうもないよね。臨也って。」
「何それ。帝人だけだよ。俺にそんな評価くだすの。」
「外面だけはいいもんね。」
「……ムカつく。」

今すぐ押し倒してやろうかと思うが、そんなことをしたら後が怖いので軽く太股を叩くくらいにしておいた。

「寝る。」
「ん。チャイムが鳴ったら起こしてあげる。」

瞳を閉じてからしばらくして寝息が聞こえてきたのを確認してから小さな声で帝人は囁く。




「どんなにしょうもなくてどうしようもなくても許すよ。僕は。仕方ないよね好きなんだから。」




しばらく臨也の寝顔を見ていた帝人はふと思いつき、ポケットから取り出した携帯で膝の上で眠る臨也にレンズの焦点を合わし、シャッターをきった。






いつまでこうしていられるのかな。
  (そんなの一生に決まってるじゃない!)




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